大阪地方裁判所 昭和37年(ワ)4872号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決要旨〕一、取締役Aを解任する旨の社員総会の決議に議長選任手続、採決の際の提案理由の説明及びそれについての討論をせず、かつ出席者の一人の代理権限を不法に否認した諸点に瑕疵があるとしても、総会招集権者の一人が議長となつて議事に入り決議がなされたのであるから、前記の瑕疵があることは右決議取消の理由となることは格別、右決議の成立を妨げるものでなく取締役Aを解任する社員総会の決議は存在する。
二、その後Aの招集によつてなされた本件社員総会は代表取締役たる地位を失い総会招集権限を有しないものによつて招集されたものであるから社員総会として成立しておらずそこでなされた決議は不存在である。
〔判決理由〕請求の原因第一項、第三項、第四項記載の事実および宮原チカが設立以来昭和三七年一〇月三一日まで、被告の代表取締役であつたことは、当事者間に争いがない。
そうすると、本件の争点は、同日開催された被告の社員総会における取締役宮原チカ解任の決議が存在するか否かにある。
そこで、以下、この点について判断する。
まず、同日午後一時、右解任のための被告の社員総会が適法に開催されたことは、当事者間に争いがない。
<証拠>を総合すると、つぎのとおり認定することができる。
前記日時の社員総会は、被告の社員である丸野八郎、原告および丸野道子の三名が、少数社員権に基づき裁判所の決定を得て招集したものであるが、定刻に会場に出席したものは、右三名および宮原チカと社員宮原静の代理人としての大高和男の五名であり、大高の代理権に対し、一旦異議が述べられたが撤回された。ついで、議長選出の議決を行い、丸野八郎を議長とする案に対する賛成者は、同人、原告および丸野道子の三名で、他は反対し、宮原チカを議長とする案に対する賛成者は、大高和男で、右三名が反対し、大高和雄は、右の採決は、双方の持分において、可否いずれも同数であるとして、これを証する資料を提出した。これに対し、丸野八郎は、前言をひるがえして、大高和男の持参した委任状は無効であるから認めない。議案の当事者である宮原チカがこの総会の議長となることは、議案の性質上妥当でないといい、総会招集者の一員として、自分が議長になると称して宮原チカを解任する旨の議案を提出し、直ちに採決し、自己および丸野道子、原告の賛成を得て、この議案は可決されたといい、そのまま退場した。右の議案の提出、採決の間、宮原チカと大高和男は、その場にいたが、流会を主張していただけである。
以上によれば、右社員総会の決議には、議長選任の手続、採決の際提案理由の説明およびそれについての討論をせず、かつ大高和男の代理権を否認した等の諸点に瑕疵があるとみられる。
しかし、ともかくも、総会招集者の中の一人である丸野八郎が議長となつて(他の招集者たちがそのことについて異議のなかつたことは、弁論の全趣旨から明らかである)議事に入り、決議がなされたのであるから、前記の瑕疵があることは、決議取消の理由となることは格別、それらが右決議の成立を妨げるものとは認められず、従つて、昭和三七年一〇月三一日午後一時開催の被告の社員総会における取締役宮原チカを解任する旨の決議は、存在するものといわなければならない。
以上によれば、宮原チカは、本件社員総会の招集通知をした昭和三七年一一月一日当時、被告の代表取締役たる地位を失つていたのであり、被告の社員総会を招集する権限を有していなかつたのである。
そうすると、同年同月一一日の本件社員総会は招集権限のない者の招集によつて開催されたものであるところ、招集権限のある者によつて招集されることは、有限会社の社員総会の成立要件の一つであるから、本件社員総会は、被告の社員総会として成立しておらず、従つて、そこでなされた決議は、被告の社員総会の決議とはいえない。(沢井種雄 道下徹 藤本清)